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Na-Thought

フィクションでもノンフィクションでもいいのです

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初恋「人並みに恋もしていたつもり」

 もちろん、今まで人並みに「好きな人」は居たと思う。
「あの人かっこいいね」「あの先輩かっこいいね」
 たかし先輩にまさき先輩。そういえば憧れるのは年上の男の人が多かったかな。スポーツができて、明るくて、みんなの人気者で、いつも笑顔の人がいつも私の憧れの的になっていた気がする。
  
 でも、まだ実際に恋人ができたことは無い。
  

 


  
 高校2年生の女子達なんて言うのは口を開けば「恋バナ」で盛り上がるものだ。友人やクラスメートの「恋バナ」に耳を傾けては、うらやむ気持ちや憧れる気持ちが膨らむ。もちろん、恋愛にも男の子にも興味津々の年頃で、少女漫画のような、恋愛を歌った流行りの邦楽のような恋に常に憧れているものだ。
  
 高校生になってから初めて同い年の男の子に憧れた。
 川田君は野球部のエースピッチャーで、パッチリ二重のモデルのような男の子。女子から人気もあり、これほどマウンドに立つ姿が絵になる人は彼以上にいないだろう。マネージャーとして野球部に入ってから「こんなにキレイな男の子がいるなんて」と衝撃を受けたのを今でも鮮明に覚えている。
  
 彼を見ているとごくごく平凡な自分が恥ずかしくなる程だ。強い日差しの中にいる事が多かったからか、染めていない黒髪は傷み少し色が抜け、ボブだった髪はそのまま肩程まで伸びっぱなし。この夏の試合では何度も日焼け止めを塗り忘れ、スカートの日焼け跡が未だにくっきり残っている。シーズンオフのこの晩秋からしばらくは少しお洒落も楽しみたい所だが、スカートのウエストを折ればその日焼け跡がまるで滑稽だ。挙句の果てにはルーズソックスのラインまで日焼け跡がついている。周りの小奇麗にメイクやお洒落を嗜む同級生たちを横目に、まだまだ化粧もろくに覚えていない、野暮ったい自分が嫌になることもしばしば。
  
 恋をすると女の子はキレイになるなんて雑誌や少女漫画で見かけるけれど果たして本当なのだろうかなんてよく考えてしまう。「キレイにならないという事は、川田君への気持ちは本物の恋ではないのだろうか」なんて、たまに悩んだりもする。

日々、アイドルを見てはしゃぐ女子達のように友人と「恋をしている事」を共有して楽しんだりもする。この年頃は「恋人がいる」「好きな人がいる」というのが一つのステータスであるのか、話題になる事が多い。憧れの気持ちと恋愛をすり替えて、大人の恋愛に憧れているのだ。一歩進んだ大人の恋愛を楽しむクラスメートがいれば周りは興味津々、まるで恋愛の大先輩とでも言わんばかりに彼女らに憧れる。
  
  


  
 川田君と佐羽内は仲が良く、エースピッチャ―とキャプテンとしてうちの野球部を切り盛りする大黒柱だ。佐羽内と仲良くなれたら川田君の話も色々聞いてみようと浮つく気持ちでドキドキする。
  
 これから佐羽内からメールが来るのか。彼の方が私と連絡を取りたがっているのか。そう考えると何だかそわそわする。恋愛漫画の読みすぎか、何かが始まるのではないかと胸が熱くなるのを感じる。彼女がいる人なのに。
  
 実は、私というと最近ようやく携帯電話を持たせてもらったばかりなのだ。先月まではポケベルを持っていたが周りはすでに携帯電話を持っている子ばかりで、メールや絵文字などが同じように楽しめない事が日々とてもストレスだった。ここ最近テレビにも雑誌にも引っ張りだこの歌手に憧れ、彼女がCMに出演していた携帯電話が欲しいと必死に親を説得し、ようやく手に入れたお気に入りの携帯電話には、まだ男の子からのメールは来たことが無い。まだまだ初めてばかりだった。だから今回は色々と特別だった。
  
  
  
 このお気に入りの新しい携帯電話に佐羽内からの連絡が届くまでそう時間はかからなかった。
  
 たわいもない内容のメールを連日交わし、気が付けば数時間の長電話を楽しむことも増えた。そんな期間が1ヶ月程続き、私の気持ちは高ぶっていた。特定の男の子と連日たわいの無い連絡を交わし、同じ時間を共有して楽しむ事など初めての事だった。
  
 佐羽内との毎日は、恋に恋する私にとって、最高のシチュエーションであり、理想的な展開だ。佐羽内とはきっとこんな風に楽しい時間がずっと続くのだろうと思うようになった頃、佐羽内が自分の中で少し特別な存在となっている事に気付いてしまった。
  
  
 全てが楽しかった。
 順調に感じていた。
 少しの違和感を感じながら。